#TRH.連結辞
別の句との並列を表すように句の文法的役割を変える離辞を 「連結辞 (conjunction)」 と呼ぶ。
連結辞は и́, у́, ну́ の 3 種類のみである。 и́ は複数の要素の集まりや論理的連言を表し、 у́ は複数の要素の論理的選言を表す。 ну́ は疑問表現における選択肢を提示するのに使われ、 その具体的な用法は #TXZ でも述べる。
3 つの連結辞は意味のみが異っており、 その統語論的な振る舞いは共通である。 そのため、 続くセクションでは種類によらずその用法について述べる。
#TRA.連結辞の用法
#TNG.基本的な用法
連結辞は語の直前に付けられる。 連結辞が付けられた語は、 その詞によって定まる修飾機能の代わりに、 同じ詞をもつ別の句の後ろに置かれることでその句と並列されるという新たな機能を果たすようになる。 例えば、 ある名詞 A に и́ が付いた и́ A という形は、 別の名詞 B の直後に置かれて B и́ A という形を作る。 結果的に、 連結辞は並列される句の間に位置することになる。
連結辞によって連結される句は常に共通の詞をもつ。 さらに、 連結されている句が名詞である場合は、 両者の連性と格は必ず同じである。 連結されている句が形容詞の場合も、 両者の連性と類と格と定性は全て同じであるが、 これは連結辞の用法による制約であるというよりは、 同じ名面を形容することになるので一致現象によって自動的に満たされるものである。
- Лоте̂вво е̂кно ги̂но и́ хи̂ру.
- その彫刻は大きくて美しかった。
- Но̀к тевезле̂ богги̂тка у́ фи̂срареди̂ска у́ ри̂даса?
- 鉛筆かボールペンか万年筆を持っていませんか?
1 では、 形容詞 хи̂ру に и́ が付けられ、 それが同じく形容詞である ги̂но の直後に置かれて、 全体で ги̂но и́ хи̂ру という形容詞句が作られている。 これは е̂кно の補語として働いている。 2 では、 2 つの名詞 фи̂срареди̂ска と ри̂даса の両方に у́ が付けられ、 それが順番に богги̂тка の後に置かれることで、 全体で богги̂тка у́ фи̂срареди̂ска у́ ри̂даса という名詞句が作られている。 3 つの名詞が全て連用対格であることにも注目されたい。
#TNF.節を連結する場合
連結辞が動詞に付くことで、 節と節が繋げられることもある。 このとき、 連結辞が付けられた節内で節頭遷移が起こっていることがあるが、 その場合の遷移は連結辞と動詞の間で行われ、 連結辞は常に節の先頭に置かれる。 結果的に、 連結辞は節と節の間に位置することになる。 そのため運用上は、 連結辞が動詞に付随していると考えるより、 連結される節の間に挿入されると考えた方が直感的ではある。
- Исаму̂нан логу̂жне лони̂чме и́ е̂дде ивену̂ш лодди̂ӈке лосу̂манов.
- 私は去年結婚して、 今は相手の実家で暮らしている。
1 の и́ は、 文法的には ивену̂ш に付随するもので、 ивену̂ш を主要部とする後半の節と исаму̂нан を主要部とする前半の節を連結している。 しかし、 節頭遷移の結果 е̂дде が ивену̂ш の前に移動しているため、 и́ と ивену̂ш は位置的に離れている。
#TNV.文頭
и́ に限り、 文頭に単独で現れることがある。 これは、 и́ が節を繋げている形から、 前半の節が文として独立したものだと考えられる。
- Бо̀ тебусожи̂л лочди̂кузам. И́ бо̀ тевеҕфи̂ ми̂рҕа.
- 部屋の掃除をして。 それと、 牛乳を買ってきて。
この形は、 原則として口語や詩歌でのみ現れる。 ただし、 1 つのアクセント群だけからなる文に小辞が置かれる場合に限り、 その小辞が付随する先として、 文語でも文頭に и́ が置かれ得る。 これについては #TFF を参照せよ。
#TNP.連結辞が作る句への修飾
連結辞で繋げられる句は、 全て同じ詞をもたなければならないが、 同じ面をもつとは限らない。 連結辞で繋がれている句が全て同じ面をもっている場合は、 繋がれている箇所全体もその面をもっていると扱われ、 それに別の句が修飾することがある。
- Езау̂хо ҕаду̂лла и̂дди си̂шша и́ пи̂фса ажжи̂бӈа.
- 私はここで黒いシャツとスカートを買うつもりだ。
1 では、 и́ が繋いでいる си̂шша と пи̂фса がともに名面であるため、 си̂шша и́ пи̂фса 全体も名面として振る舞う。 そのため、 後にある ажжи̂бӈа は си̂шша и́ пи̂фса 全体に係っていると解釈することができ、 そうであればこの部分は 「黒いシャツと同じく黒いスカート」 を意味することになる。 ただし、 この ажжи̂бӈа は пи̂фса にのみ係っているとも解釈できる。 どちらであるかは構文からは判断できないため、 文脈によってのみ定まる。
#TDF.小辞
並列されている要素の意味的な関係性を示す離辞を 「小辞 (particle)」 と呼ぶ。 要素の並列は多くの場合で連結辞によって行われるため、 小辞は連結辞に付随する辞として説明できる。 ただし、 文の単なる連続もある種の並列であり、 小辞がこのような連続する文の関係性を示すこともある。 この場合の小辞は、 文の先頭に仮想的に存在する空要素に付随していると分析することができる。
小辞が節の関係性を示す場合と節以外の句の関係性を示す場合とでその位置は異なるため、 それぞれの場合に分けて続くセクションで詳細に述べる。
#TRY.小辞の用法
#TFF.節の関係性の明示
小辞が直前の節との意味的な関係性を示すときは、 その小辞は最初のアクセント群の直後に置かれる。 この位置は、 最初の語の直後 (すなわち 2 語目) であるとは限らず、 また修飾関係に割り込むような位置になる可能性もある点に注意せよ。
- Иҕду̂лан ди̂ска. Ажадди̂сно ех маг цо̀ о̂ффано.
- 私はペンを買った。 というのも、 私の友達がそれを必要としていたからだ。
- Екаххи̂зно. Цѐ лечу̂ҕассе дас леҕу̂намме баму̂ҕҕанез лозе̂ккос.
- 私は起きた。 そのとき、 私の古い時計が床に落下した。
1 の後半の文では、 人称代詞の短形である ех が前接語であるため、 この節の最初のアクセント群は ажадди̂сно ех までであり、 そのため小辞 маг がその後に置かれている。 2 の後半の文では、 最初のアクセント群が цѐ лечу̂ҕассе であるため、 その後に修飾語 леҕу̂намме が続いているものの、 小辞 дас は цѐ лечу̂ҕассе の直後に置かれ、 結果的に小辞が修飾関係に割り込むような形になっている。
小辞は、 1 つの文中で連結辞で繋げられている 2 つの節の関係性を表すことも、 連続する 2 つの独立した文の関係性を表すこともある。 小辞を含む節の前で文が途切れていない方が節の繋がりが強いと分析することもできるが、 ほとんどの場合で単にスタイルの違いに過ぎずニュアンスの違いはない。
- Зи̂хно леӈги̂таббес, и́ те̂дди са талефи̂гно.
- 彼は公園に行き、 そしてそこで散歩をした。
- Зи̂хно леӈги̂таббес. Те̂дди са талефи̂гно.
- 彼は公園に行った。 そしてそこで散歩をした。
3 は 1 つの文であるため、 小辞は 2 つの節の関係性を示している。 一方、 4 では小辞の前で一度文が切れているため、 小辞は 2 つの文の関係性を示している。 下に附した日本語訳はこれらの違いを反映させたものだが、 実際にはそれほど大きなニュアンスの違いはない。
小辞が節末に置かれることはない。 そのため、 連続する 2 つの節のうち後半の節が 1 つのアクセント群だけから成っていて、 小辞がこれら 2 つの節の関係性を示す場合は、 節の最初に 〈и́ + 小辞〉 が置かれた形をとる。 これは、 もとから и́ が付随している節に小辞が置かれる場合でも、 独立した文に小辞が置かれる場合でも、 同様である。
- Цу̂тан ки̂тташа си̂хна, и́са ҕаду̂лан ех.
- 彼女はおもしろそうな本を手に取って、 それを買った。
- Цу̂тан ки̂тташа си̂хна. И́са ҕаду̂лан ех.
- 彼女はおもしろそうな本を手に取った。 そしてそれを買った。
5 や 6 で са が置かれている節には ҕаду̂лан ех という 1 つのアクセント群しか存在しない。 そのため、 通常通り са を最初のアクセント群の直後に置こうとすると са が節の末尾に位置することになるので、 それを避けるために са が例外的に節頭に置かれている。
口語においては、 節の形によらず 〈и́ + 小辞〉 の形が好まれ、 小辞が節の最初のアクセント群の直後に置かれることはむしろ少ない。
- Зи̂хно леӈги̂таббес, и́са те̂дди талефи̂гно.
- 彼は公園に行き、 そしてそこで散歩をした。
#TFV.節以外の句の関係性の明示
小辞は、 節以外の句が連結辞で結ばれている箇所において、 その連結辞の直後に挿入されることもある。
- Ѝ ледди̂м е̂к зебу̂баҕ и́ӈа хи̂ват леву̂довзам.
- このレストランは素晴らしいが家から遠い。