日記 (2025 年 3 月 25 日)

さて前回で、 一般的な形での完全性が証明された。 今回は、 K[D], K[T], K[T,B], K[T,4], K[T,5] の 5 つの体系に対して、 より具体的な形の完全性を明らかにする。 そのために、 体系に D,T,B,4,5 が追加されているときに、 その正準モデルがどのような形になるのかをより精密に調べる。

5 種類のスキーマそれぞれについて個別に議論しても良い (その方が手数は増えるが易しい) が、 2 月 25 日でも述べたようにこれらのスキーマは全て同様の形をしているので、 より一般化した形で一気に議論を進めてしまおうと思う。 ここで、 これらのスキーマの一般化について、 少し思い出しておこう。 自然数 p,q,r,s と式 A に対し、 GApqrs:≡⬦p◻qA⇀◻r⬦sA と定義すると、 D,T,B,4,5 は、 D≡G0101T≡G0100B≡G00114≡G01205≡G1011 と書けるのであった。 そこで以降は、 体系に Gpqrs が含まれているときに、 その正準モデルがどうなるかを調べることにする。

まずは準備として、 ◻ と ∨ の分配性について触れておこう。 命題 5.6 によって ◻ と ∧ は分配するが、 ◻ と ∨ については一方の含意関係しか一般には成り立たない。

命題 13.1.

正規な理論 󱁑 をとる。 式 A1,⋯,An に対し、 ⊢󱁑◻A1∨⋯∨◻An⇀◻(A1∨⋯∨An) が成り立つ。

証明.

各 i(1≤i≤n) に対し、 ⊢󱁑Ai⇀A1∨⋯∨An が成り立つ。 すると、 命題 5.2 により、 ⊢󱁑◻Ai⇀◻(A1∨⋯∨An) が分かる。 これが全ての i について成り立つから、 命題 5.1 により、 ⊢󱁑◻A1∨⋯∨◻An⇀◻(A1∨⋯∨An) が得られる。

今回は使わないが、 双対的に ⬦ と ∧ に関しては以下が成り立つ。

命題 13.2.

正規な理論 󱁑 をとる。 式 A1,⋯,An に対し、 ⊢󱁑⬦(A1∧⋯∧An)⇀⬦A1∧⋯∧⬦An が成り立つ。

証明.

まず命題 13.1 により、 ⊢󱁑◻¬A1∨⋯∨◻¬An⇀◻(¬A1∨⋯∨¬An) が成り立つ。 命題 6.2 を用いて ◻(¬A1∨⋯∨¬An) の部分を置き換えれば、 ⊢󱁑◻¬A1∨⋯∨◻¬An⇀◻¬(A1∧⋯∧An) が得られる。 すると、 ◻ と ⬦ の双対性から、 再び命題 6.2 によって、 ⊢󱁑¬⬦A1∨⋯∨¬⬦An⇀¬⬦(A1∧⋯∧An) が分かる。 最後に命題 5.1 により、 ⊢󱁑⬦(A1∧⋯∧An)⇀⬦A1∧⋯∧⬦An が得られる。

ここで、 かなり唐突で天下り的だが、 後で使うので以下を示しておく。

補題 13.3.

正規な理論 󱁑 をとる。 式 A と式 B1,⋯,Bn に対し、 ⊢󱁑A∧⬦B1∧⋯∧⬦Bn⇀⊥ が成り立つならば、 ⊢󱁑A⇀◻¬(B1∧⋯∧Bn) も成り立つ。

証明.

では、 ⊢󱁑A∧⬦B1∧⋯∧⬦Bn⇀⊥ を仮定する。 まず命題 5.1 により、 ⊢󱁑A⇀¬(⬦B1∧⋯∧⬦Bn) が分かり、 さらに、 ⊢󱁑A⇀¬⬦B1∨⋯∨¬⬦Bn も分かる。 ◻ と ⬦ の双対性から、 命題 6.2 を用いれば、 ⊢󱁑A⇀◻¬B1∨⋯∨◻¬Bn が得られる。 ところで、 命題 13.1 によって、 ⊢󱁑◻¬B1∨⋯∨◻¬Bn⇀◻(¬B1∨⋯∨¬Bn) が成り立つから、 今得られた 2 つの主張に命題 5.1 を使うことで、 ⊢󱁑A⇀◻(¬B1∨⋯∨¬Bn) が分かる。 最後に命題 6.2 を用いて、 ⊢󱁑A⇀◻¬(B1∧⋯∧Bn) が得られ、 補題の主張が示された。

さて、 後々のため、 3 月 20 日に用意した記号を拡張しておこう。 そこでは、 式の集合 Γ に対して ◻Γ や ◻−1Γ などを定義した。 これの指数を拡張して、 自然数 p と式の集合 Γ に対し、 ◻pΓ := {◻pA∣A∈Γ} ⬦pΓ := {⬦pA∣A∈Γ} ◻−pΓ := {A∣◻pA∈Γ} ⬦−pΓ := {A∣⬦pA∈Γ} と書くことにする。 この記号については、 次が成り立つ。

命題 13.4.

正規な理論 󱁑 をとる。 自然数 p に対し、 ⬦pΔ⊆Γ ⟺ Δ⊆⬦−pΓ が成り立つ。 さらに、 Γ,Δ がどちらも 󱁑-極大整合的であれば、 自然数 p に対し、 ◻−pΓ⊆Δ ⟺ Δ⊆⬦−pΓ も成り立つ。

証明.

1 つ目の同値性を示す。 まず ⬦pΔ⊆Γ が成り立つと仮定する。 任意に A∈Δ をとると、 ⬦pA∈⬦pΔ であるから、 仮定より ⬦pA∈Γ が得られる。 すなわち、 A∈⬦−pΓ が成り立つ。 A は任意だったから、 これで Δ⊆⬦−pΓ が示された。

逆に Δ⊆⬦−pΓ が成り立つと仮定する。 任意に A∈⬦pΔ をとると、 ある式 B∈Δ が存在して A≡⬦pB と書ける。 仮定から B∈⬦−pΓ が成り立つから、 ⬦pB∈Γ が分かり、 すなわち A∈Γ が得られる。 A は任意だったから、 これで ⬦pΔ⊆Γ が示された。

2 つ目の同値性は、 命題 11.9 と全く同様に示せる。

では、 正準モデルにおける世界 (すなわち極大整合的集合) の間の関係について調べていこう。 自然数 p に対し、 この関係を p 回繰り返して得られる関係は、 とても自然な形に書ける。

命題 13.5.

正規な理論 󱁑 をとる。 󱁑-極大整合的集合の間の関係 ∼ を、 各 Γ,Δ に対し、 Γ∼Δ:⟺◻−1Γ⊆Δ で定めると、 任意の自然数 p に対して、 Γ∼pΔ⟺◻−pΓ⊆Δ が成り立つ。

証明.

p に関する帰納法による。

p=0 のときは、 Γ=Δ と Γ⊆Δ の同値性を示せば良い。 Γ=Δ であれば、 当然 Γ⊆Δ が成り立つ。 逆に Γ⊆Δ であれば、 Γ の極大性から Γ=Δ でなければならない。 これで、 この場合に命題の主張は示された。

以降 p≥1 とする。 ∼p の定義により、 Γ∼pΔ であることは、 以下の条件と同値である。

  • ある極大整合的集合 Θ が存在して、 Γ∼p−1Θ かつ Θ∼Δ が成り立つ。

帰納法の仮定と ∼ の定義により、 これはさらに以下とも同値である。

  • ある極大整合的集合 Θ が存在して、 ◻−p+1Γ⊆Θ かつ ◻−1Θ⊆Δ が成り立つ。

以上の観察のもと、 命題の同値性を示す。

まず、 上記条件を仮定する。 すなわち、 ある極大整合的集合 Θ が存在して、 ◻−p+1Γ⊆Θ かつ ◻−1Θ⊆Δ が成り立つとする。 この仮定から ◻−pΓ⊆Δ を示したい。 そこで、 任意に A∈◻−pΓ をとると、 これは ◻pA∈Γ が成り立つということである。 ◻pA≡◻p−1(◻A) だから、 これより ◻A∈◻−p+1Γ が分かる。 今 ◻−p+1Γ⊆Θ であったから、 ◻A∈Θ すなわち A∈◻−1Θ が得られる。 さらに ◻−1Θ⊆Δ でもあったから、 A∈Δ が得られる。 A は任意だったから、 これで ◻−pΓ⊆Δ が示された。

逆に、 ◻−pΓ⊆Δ が成り立つと仮定する。 示すべきは、 すでに述べたように以下の条件である。

  • ある極大整合的集合 Θ が存在して、 ◻−p+1Γ⊆Θ かつ ◻−1Θ⊆Δ が成り立つ。

しかし命題 13.4 により、 これは以下と同値である。

  • ある極大整合的集合 Θ が存在して、 ◻−p+1Γ⊆Θ かつ ⬦Δ⊆Θ が成り立つ。

ここで、 ◻−p+1Γ⊆Θ かつ ⬦Δ⊆Θ であるとは ◻−p+1Γ∪⬦Δ⊆Θ であるということなので、 これは以下とも同値である。

  • ある極大整合的集合 Θ が存在して、 ◻−p+1Γ∪⬦Δ⊆Θ が成り立つ。

ところで、 命題 10.9 により、 これを示すためには、 ◻−p+1Γ∪⬦Δ が整合的であることを示せば良い。 そこで、 以下で ◻−p+1Γ∪⬦Δ が整合的であることを示す。

矛盾を導くため、 ◻−p+1Γ∪⬦Δ が整合的でないと仮定する。 これは ◻−p+1Γ∪⬦Δ⊢󱁑⊥ であるということだから、 ある式 G1,⋯,Gn∈◻−p+1Γ と H1,⋯,Hm∈⬦Δ が存在して、 ⊢󱁑G1∧⋯∧Gn∧H1∧⋯∧Hm⇀⊥ が成り立つ。 ⬦Δ の定義により、 さらに H1󰎘,⋯,Hm󰎘∈Δ が存在して、 ⊢󱁑G1∧⋯∧Gn∧⬦H1󰎘∧⋯∧⬦Hm󰎘⇀⊥ が成り立つ。 ここで補題 13.3 を使えば、 ⊢󱁑G1∧⋯∧Gn⇀◻¬(H1󰎘∧⋯∧Hm󰎘) が得られ、 さらに命題 5.2 を p−1 回適用することで、 ⊢󱁑◻p−1G1∧⋯∧◻p−1Gn⇀◻p¬(H1󰎘∧⋯∧Hm󰎘) が分かる。 今 ◻p−1G1,⋯,◻p−1Gn∈Γ であるから、 これより、 Γ⊢󱁑◻p¬(H1󰎘∧⋯∧Hm󰎘) が得られたことになる。 したがって、 命題 11.5 により、 ◻p¬(H1󰎘∧⋯∧Hm󰎘)∈Γ が成り立つので、 ¬(H1󰎘∧⋯∧Hm󰎘)∈◻−pΓ も成り立つ。 ところで最初に ◻−pΓ⊆Δ を仮定していたので、 これからは、 ¬(H1󰎘∧⋯∧Hm󰎘)∈Δ が分かる。 さて一方で、 H1󰎘,⋯,Hm󰎘∈Δ であったから、 命題 11.7 より、 H1󰎘∧⋯∧Hm󰎘∈Δ も成り立つ。 これにより、 H1󰎘∧⋯∧Hm󰎘 自身とその否定が Δ に属することになってしまうが、 それは命題 11.7 に矛盾する。 したがって、 仮定は誤りで、 ◻−p+1Γ∪⬦Δ は整合的である。

これをもとに、 各自然数 p,q,r,s に対して、 理論が Gpqrs を含むときの正準モデルが期待した性質をもつことが示せる。

命題 13.6.

正規な理論 󱁑 をとる。 自然数 p,q,r,s に対し、 󱁑 が Gpqrs を含むならば、 その正準モデル 󰒤󱁑 は (p,q,r,s)-近親的である。

証明.

正準モデルが (p,q,r,s)-近親的であることは、 関係の定義と命題 13.5 により、 以下が成り立つことである。

  • 任意の極大整合的集合 Γ,Δ,Θ に対し、 ◻−pΓ⊆Θ かつ ◻−rΓ⊆Δ が成り立つならば、 ある極大整合的集合 Ξ が存在して、 ◻−qΘ⊆Ξ かつ ◻−sΔ⊆Ξ が成り立つ。

これを示したいが、 命題 10.9 により、 以下を示せば十分である。

  • 任意の極大整合的集合 Γ,Δ,Θ に対し、 ◻−pΓ⊆Θ かつ ◻−rΓ⊆Δ が成り立つならば、 ◻−qΘ∪◻−sΔ は整合的である。

これを示そう。 極大整合的集合 Γ,Δ,Θ をとり、 ◻−pΓ⊆Θ かつ ◻−rΓ⊆Δ が成り立っているとする。 すると、 命題 13.4 によって ⬦pΘ⊆Γ も成り立つ。 ここで、 矛盾を導くため、 ◻−qΘ∪◻−sΔ が整合的でないと仮定する。 すなわち、 式 G1,⋯,Gn∈◻−qΘ と H1,⋯,Hm∈◻−sΔ が存在して、 ⊢󱁑G1∧⋯∧Gn∧H1∧⋯∧Hm⇀⊥ が成り立つとする。 これと命題 5.1 により、 ⊢󱁑G1∧⋯∧Gn⇀¬(H1∧⋯∧Hm) が得られ、 さらに命題 5.2 を q 回適用することで、 ⊢󱁑◻qG1∧⋯∧◻qGn⇀◻q¬(H1∧⋯∧Hm) が分かる。 ◻qG1,⋯,◻qGn∈Θ であるから、 これより、 Θ⊢󱁑◻q¬(H1∧⋯∧Hm) が得られたことになり、 命題 11.5 により、 ◻q¬(H1∧⋯∧Hm)∈Θ が成り立つ。 したがって、 ⬦p◻q¬(H1∧⋯∧Hm)∈⬦pΘ が成り立つが、 ⬦pΘ⊆Γ であったから、 ⬦p◻q¬(H1∧⋯∧Hm)∈Γ も成り立つ。 ここで、 󱁑 が Gpqrs を含むことから、 命題 11.6 によって、 ◻r⬦s¬(H1∧⋯∧Hm)∈Γ が得られ、 すなわち ⬦s¬(H1∧⋯∧Hm)∈◻−rΓ が分かる。 ◻−rΓ⊆Δ であったから、 ⬦s¬(H1∧⋯∧Hm)∈Δ も成り立つ。 ◻ と ⬦ の双対性から、 命題 11.7 も使うことで、 ¬◻s(H1∧⋯∧Hm)∈Δ が分かる。 さて一方で、 命題 5.2 により、 ⊢󱁑◻sH1∧⋯∧◻sHm⇀◻s(H1∧⋯∧Hm) が成り立つ。 ◻sH1,⋯,◻sHm∈Δ であるから、 これより、 Δ⊢󱁑◻s(H1∧⋯∧Hm) が得られたことになり、 命題 11.5 により、 ◻s(H1∧⋯∧Hm)∈Δ が成り立つ。 すると、 ◻s(H1∧⋯∧Hm) 自身とその否定が Δ に属することになってしまい、 命題 11.7 に矛盾する。 したがって、 仮定は誤りで、 ◻−qΘ∪◻−sΔ は整合的である。

この結果から、 Gpqrs を含む理論の完全性は次のように述べることができる。

定理 13.7.

正規な理論 󱁑 をとる。 自然数 p,q,r,s に対し、 󱁑 が Gpqrs を含むならば、 任意の式 A に対し、 ⊨IncespqrsA⟹⊢󱁑A が成り立つ。

証明.

命題 13.6 と定理 12.4 から従う。

これまで重要だと挙げた 5 つの体系については、 特に次のように述べられる。 定理 9.4 のちょうど逆になっていることにも注目したい。

定理 13.8.

任意の式 A に対し、 ⊨AllA ⟹ ⊢KA ⊨SerA ⟹ ⊢K[D]A ⊨ReflA ⟹ ⊢K[T]A ⊨Refl∩SymA ⟹ ⊢K[T,B]A ⊨PordA ⟹ ⊢K[T,4]A ⊨EquivA ⟹ ⊢K[T,5]A が全て成り立つ。

証明.

全て定理 13.7 から従う。 適宜命題 3.7 を参照せよ。

以上で、 K[D] や K[T,4] といった体系の (そして陽には述べていないが他のパターンでスキーマを追加した体系についても) 完全性が具体的に示された。 3 月 10 日で示した健全性と合わせれば、 これらの体系について、 演繹体系での証明可能性を論じることと意味論での恒真性を論じることが同値だと分かったことになる。 したがって、 これらの体系における式について調べたければ、 演繹体系と意味論のうち便利な方を適宜用いることができるわけである。

次回以降は、 一般に論理体系を考える上での重要なテーマの最後として、 決定可能性について触れていく予定である。

参考文献

  1. B. F. Chellas (1980) 『Modal Logic』 Cambridge University Press
  2. P. Blackburn, M. de Rijke, Y. Venema (2001) 『Modal Logic』 Cambridge University Press